PD-1/PD-L1阻害薬の発展

PD-1/PD-L1は、オプジーボやキイトルーダなどの免疫チェックポイント阻害薬の標的分子である。緊急薬価改定やノーベル賞などのニュースを通じて、そのメリットとデメリットは世間にもよく知られるところとなっている。

今回読んだ総説「PD-1/PD-L1阻害薬の発展」は、そうしたデメリットの解決手段の一つとしての、抗体医薬の低分子化の取り組みを紹介している。

背景

PD-1/PD-L1間の相互作用はタンパク質間相互作用(PPI)であり、低分子では”undruggable”な標的の代表例とされている。既に上市されているオプジーボやキイトルーダはもちろん、現在臨床試験が行われている化合物はほぼ全てが抗体である。PD-1/PD-L1は細胞外のタンパク質なので、抗体医薬とは抜群に相性が良い。

しかし、抗体医薬には欠点がある。タンパク質の宿命として経口投与ができないし、生産コストが高いために医療費の増大を招く。特にコストの問題は切実である。オプジーボ狙い撃ちの緊急薬価改定に始まり、現在では収載時の76%引きにまで値下げされているように、既に大きな社会問題になっている。

中分子化

抗体を脱却する取り組みの中でも、比較的取り組みやすいのは中分子化、それもペプチド化であろう。精華大学のLiuらはファージディスプレイ法を利用することで、PD-L1阻害剤として12残基のペプチドを見出している。このペプチドはD体であることから代謝安定性の問題を解決しており、in vivoでも薬効があったようだ。

インドのバイオテックであるAurigene社は、AUNP-12という約30残基の分枝ペプチドを恐らく起点として、3残基相当のペプチドミメティクスを見出している。アミド結合はオキサジアゾール環やウレア、ヒドラジド等に改変されており、中でもCA-170という化合物は経口投与可能なPD-1阻害薬としてPhase1試験が始まっている。既に中分子化の流れは一段落したようで、やはり時代は低分子化へと進んでいる。

低分子化

オプジーボの本家本元であるBMS社も低分子化を試みているようで、ビアリール基・アリール基・親水性領域が連結した化合物についての複数の特許を出している。米国の製薬企業であるIncyte社や中国勢も複数の化合物を報告しているが、いずれもほぼ同一のファーマコフォアを持っているように見える。

BMS社の一連の化合物はPD-L1のダイマー化を促進することが示唆されており、FRETを利用した結合阻害能評価系ではIC50<10 nMを叩き出しているらしい。単純な阻害剤と異なるのでin vivoで薬効があるかどうかの予想は難しいが、PPIにこれだけやれるということは可能性を感じさせる。

共結晶のX線も撮られており、やはりPD-L1との相互作用はかなりのフレキシビリティを持つことが示唆されているようだ。BMS社の特許は堅そうだが、案外簡単に抜けられるかもしれないし、HTSに自信のある会社は自前で始めているかもしれない。いずれにせよ今後ホットな分野になりそうである。

感想

低分子化はメドケムが従来通りの方法論で食っていく代表的なやり方である。メディシナルケミストはニューモダリティを高いとか飲めないとかといった理由で何かと敬遠しがちなものだが、だからといって”undruggable”と言われる標的に敢えて最初から低分子で挑むのは無謀と言わないまでもリスクを伴う。

ニューモダリティでPoCないしPoMを取得し、その低分子化を狙うというのはやはり効率が良い。BMS社もオプジーボが承認されるずいぶん前から低分子化を進めていたようである。BMS社のように社内で完結できればそれで良いが、Aurigene社のように追いつける可能性もある。ただしこのような総説が出てからでは遅いのであり、早くから標的に注目していなければいけない。低分子薬が無くならないことに異論は無いが、だからといってニューモダリティを軽視してよい理由にはならないのである。

出典

“Development of Inhibitors of the Programmed Cell Death-1/Programmed Cell Death-Ligand 1 Signaling Pathway”

S. Jiang et al., J. Med. Chem., ASAP

doi: 10.1021/acs.jmedchem.8b00990

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