【コラム】地球温暖化でビールが2倍に値上がる

Natureのハイライトより、地球温暖化とビール価格の変動についての研究を紹介したい。もちろん専門外の分野だが、学問と社会を結ぶ研究として学ぶべき点がある。

概要

地球温暖化の影響により干ばつや熱波といった異常気象が頻発するようになっている。今までも作物に対する影響は研究されていたが、いずれも米や小麦といった主食が中心だった。今回著者は敢えてビールという贅沢品に焦点を当てたが、これは地球温暖化が日常生活に広く影響を与えることを人々に意識して欲しかったからだという。

筆者は21世紀中の温室効果ガスの排出量について4通りのシナリオを作り、各シナリオが21世紀末の各国の大麦の収穫量、ビールの消費量と値段にどのように影響を与えるかを試算した。温室効果ガスと気候変動に関する地球システムモデル(ESM)、気候と作物の収穫量に関するプロセスベース作物モデル、作物の収穫量とビールの消費量・価格に関するグローバル経済モデルの組み合わせである。

グローバル経済モデルについて補足しておこう。気候変動により大麦の収穫量が減少すると、ビールの供給(=消費量)も減少する。ビール供給が増え続ける需要に追い付かなければ当然値上がりするが、その影響は各国の大麦の収穫量・ビールの生産量がどれだけ変動するかに依存するし、各国特有のビールの需要と供給にも依存する。もちろん輸出入の変化もあるが、それら全てを考慮しないと価格というのは決められないのである。

結果はというと、最悪のシナリオで異常気象は31%も増加、大麦の収穫量は17%も減少し、ビールの消費量は16%減少、結果として世界平均でビール価格は2倍になった。国別に見るとアイルランドでは3倍、チェコではなんと7倍に値上がる。実は中国北部やアメリカでは大麦の収穫量が大幅に増えるのだが、アイルランドのようなビールが大好きな国への輸出が増えるから、世界経済を通じて結局どこでも値上がりすることになるようだ。

一方のベストシナリオを見ると、異常気象の増加は4%となり、大麦の収穫量の減少も3%に留まる。結果としてビール消費量は4%減少し、ビール価格は15%の値上がりで済む。これくらいなら何とかなりそうである。

感想

地球温暖化の危機は前世紀からずっと叫ばれているが、海面上昇とか平均気温が上がるとか言われても、正直ピンと来ないものだった。科学者と社会の壁である。この研究はビールという極めて身近な商品に焦点を当てることで、人々に自分ごととして考えてもらう材料を与えてくれている。

米や小麦の方が大事な問題なのは間違いないだろうが、ビールのインパクトは絶大だ。ビール1本500円になると言ったら、ちょっとは興味を持ってもらえるだろう。研究自体も分野の異なる3モデルを駆使するなど挑戦的で、学問と社会のあり方について考えさせられる報告だった。

出典

”Climate change is about to make your beer more expensive”

M. Warren, Nature, 562, 319 (2018)

doi: 10.1038/d41586-018-07015-7

“Decreases in global beer supply due to extreme drought and heat”

W. Xie et al., Nature Plants, ASAP (2018)

doi: 10.1038/s41477-018-0263-1

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