【コラム】なぜ女性は学会で質問しないのか

Natureに「なぜ女性は学会で質問しないのか」という研究のハイライト記事が掲載されていた。日本でこんなことを言うと感情論に陥って炎上しそうなものだが、行動生態学者の著者らは原因と改善策を科学的な手法で分析している。研究室にせよ会社にせよ、種々のコミュニティの運営の参考になると思うので、紹介したい。

概要

この研究は、女性科学者がアカデミアに定着しないのは女性科学者のロールモデルが存在しないことが一因だという仮定のもと、ロールモデルが見える場所として学会での質問回数を題材に分析を行っている。つまり、女性科学者がより学会で質問するようになれば、若い女性科学者がアカデミアで活躍できる見本となるから、アカデミアへの定着も良くなるであろう、という考えが背景にある。

調査の結果、男性の方が女性の2.5倍も多く学会で質問することが分かった。509名の研究者にアンケートをとったところ、その理由は「自分の質問が適切かどうか分からない」とか、「質問する勇気が無い」といったものだった。面白いことには、最初の質問が男性からのものだったり、会場からの質問が少なかったりすると、女性科学者の質問はますます減るのだという。

ではどうすれば良いのかというと、実は質問時間を長くとっても効果はほとんど無いらしい。大事なのは質問しやすい環境を作ることで、質問時間の前に考えを整理するための小休止を挟んだり、一つ一つの質問を短くして質問数を増やしたり、質問は早いもの勝ちではなく最初の質問者に女性を選んだりと、学会運営側の様々な工夫を提案している。

感想

女性科学者の部分は、新入~若手社員とか、学部~修士課程学生とか、他のマイノリティに置き換えても恐らく通じるであろう。もし若手が育たないという悩みを抱えているなら、それは年寄りの驕りかもしれない。

ミーティングで質問前に先輩にひそひそ話で相談するくらいの私語は許せばいいし、スタッフや博士課程学生が我先に長々と質問するのも考えものである。もっとも、当の本人はそれこそが教育だと信じているのだが。科学を研究するコミュニティなら、教育も科学的に取り組むべきなのだ。

出典

“Why fewer women than men ask questions at conferences”

Nature, 562, 451 (2018)

doi: 10.1038/d41586-018-07049-x

“Women’s visibility in academic seminars: Women ask fewer questions than men”

A. J. Carter et al., PLOS One, 13, e0202743 (2018)

doi: 10.1371/journal.pone.0202743

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする