アステラスは12月に遺伝子治療ベンチャーのAudentes買収を発表したばかりですが、同月の内に今度はconvertible CAR-TのXyphos買収を発表しました。
そのXyphosですが、実は1年以上前に「免疫細胞のリターゲティング」という文脈で紹介したことがあります。現在そういったコンセプトで実用化されているのは通常のCAR-Tと、二重特異性抗体のBiTEくらいのものですから、Xyphosはこんな未来もあるかも、くらいのつもりでの軽い紹介でした。
コンセプトは明快ながらレギュラトリー上の課題が多そうなのでそれほど魅力的には感じなかったのですが、アステラスはそうは思わなかったようです。アステラスはもともと細胞医薬にも力を入れている会社ですので、自社のアセットが活かせると感じたのでしょう。
実際、アステラスが過去に買収した会社の技術を利用して、convertible CAR-Tを他家由来細胞として低コストで供給できるという目論見もあるようです。そこまでできれば本当にナノマシンのような使い方ができそうで夢があります。
Xyphosの買収額は130億円と、Audentesの3300億円と比べれば少額です。Audentesの買収は、パイプラインの獲得とともにAAVベクターの生産能力を確保するという、遺伝子治療の実用化の課題を解決するためのものでした。いわば、時間をお金で買うタイプの買収です。今回のXyphosの買収は、将来に向けて種を撒くタイプの買収と評価できると思います。
現時点でXyphosの買収がプラスかマイナスか判断することはできません。しかし、自社アセットとどのように組み合わせるのか。レギュラトリーの課題をどう克服するのか。アステラスにはどんな将来が見えているのか。興味深いディールです。