【成功の第一法則】能力は必ずしも成功をもたらさない

The Formula: The Universal Laws of Successより、成功の第一法則を紹介します。著者のバラバーシと本書の概要については、過去記事をご覧ください。

Barabási Albert-László(バラバーシ・アルベルト・ラースロー)は理論物理学者で、ネットワークサイエンスの第一人者として...

成功の第一法則

パフォーマンスが成功をもたらす。ただしパフォーマンスが測定できない時はネットワークが成功をもたらす。

我々は、成功するためには努力しろと、家庭でも学校でも言い聞かされて育ったものです。しかし、我々はパフォーマンスが成功の十分条件ではないことを経験的に知っています。成功の第一法則は、これらを内包するものと言えます。

アスリートと芸術家という正反対の世界から、この法則を紐解いていきます。

パフォーマンスが測定できる場合

パフォーマンスが測定できる場合、パフォーマンスは成功をもたらします

プロテニス選手のパフォーマンスは正確に測定可能です。テニス選手のパフォーマンスは、各大会での成績を機械的に換算したポイントにより決定されるからです。グランドスラムの優勝者は2000ポイントに対し、初戦敗退者は10ポイントといった具合です。パフォーマンスが正確に測定できることは、バラバーシの最初の研究に好都合でした。

一方、テニス選手における成功は、収入で表すことができます(※)。実はテニス選手の収入というのは賞金よりもスポンサーの広告料がメインです。そして、スポンサーがどれだけ広告料を出してくれるかは、その選手がどれだけ有名かに依存しています。 選手の収入は一部のトップ選手を除いて明らかになっていないので、 選手がどれだけ有名かを調べることにしました。

選手がどれだけ有名か、どうやったら測定できるでしょうか?選手の名前がGoogleでどれだけヒットするかは一見良い指標に見えます。しかし、同姓同名の一般人も検索に引っかかってしまうため、使うことができません。そのかわり、その選手のWikipediaのページがどれだけ表示されているかを指標にすることにしました。

その結果、テニス選手のパフォーマンス(ランキング)と成功(Wikipediaの表示回数)は良い相関を示すことが明らかになりました。選手の日々の戦績からWikipediaの表示回数を予測することもできました。このことは、フェデラーやジョコビッチ、マレー、ナダルといったトップ選手から期待の新人まで誰にでも当てはまるものでした。

結局のところ、テニス選手の成功はパフォーマンスだけに依存していることが分かりました。これは当たり前のことでバラバーシにとってはややつまらない結果でしたが、ともかくパフォーマンスが成功をもたらすという原則を出発点に、他の分野でも同じことが言えるかどうか調べることにしました。

※ここでテニス選手の大会成績が成功に含まれないのは、成功を「周囲からの評価」と定義したためです。大会で良い成績をあげること自体は選手自身にとっての成功であり、それが周囲にどう評価されるかが、本書における成功の定義だからです。

パフォーマンスが測定できない場合

パフォーマンスが測定できない場合、ネットワークが成功をもたらします。

アスリートと異なり、芸術家のパフォーマンスは測定することができません。この場合は、どうやってパフォーマンスと成功の関係を調べたら良いでしょうか?

一つの方法は、パフォーマンスが同程度であろう2人を用意して、その「成功」を比較することです。これは遺伝的要因と環境的要因を区別するために双子を使って研究をすることに似ています。

バラバーシは、1970年代に一世を風靡したストリートアートユニットのSAMO(C)に注目しました。SAMO(C)の正体は、生まれも育ちもほとんど同じ、高校の友人同士であるバスキアディアスでしたが、仲違いにより解散。1979年から別の道を歩み始めます。

その結果どうなったか? バスキアは米国を代表するアーティストの一人となり、あのZOZOTOWNの前澤友作が100億円以上という米国人アーティスト史上最高額で絵画を落札したことでも話題になりました。一方のディアスは現在も創作活動を続けていますが、今でも代表作はSAMO(C)のもので、無名と言っても過言ではありません。

数ヶ月前、インスタグラム上に突如、画家ジャン=ミシェル・バスキアのポートレートが数枚ポストされた。写っているのは確かにバスキアだが、話題をさらったのはその撮影日だ。彼がアンディ・ウォーホルとタッグを組みセレブアーティストの仲間入りするよりもっと前、前衛的なノイズバンドを結成するよりもう少し前。つまり、世間が想像するバス...

どうしてこうなったか?ディアスは一匹狼でしたが、バスキアはネットワーカーでした。バスキアはウォーホル、ヘリング、コルテスといったいずれも米国を代表するアーティストと親交を深め、彼の作品は瞬く間に世に知れ渡るようになります。 そしてセレブリティーの階段を駆け上がり27歳の若さで亡くなった後も、ますます評価され続けています。

生まれも育ちもほとんど同じ、SAMO(C)の解散時点ではパフォーマンスも同じだったはずのバスキアとディアスの成功にこれだけ差がついたのは、ネットワークの差だったわけです。つまり、パフォーマンスを測定できない場合はネットワークが成功をもたらすのです。


バラバーシは本エピソードに着想を得て、芸術家の成功をネットワーク論的に明らかにしました。詳細は省きますが、要するに芸術家の成功は最初にどれだけ上位の美術館で展覧会を開催したかに依存していました。

最初の展覧会を開催したのが、美術界でより中心的な美術館であるほど、次も上位の美術館で展覧会をできる可能性が高まります。一方、下位の美術館から展覧会を始めた場合、その「孤島」から抜け出して中心的な美術館という「大陸」に戻ることは難しいというのです。

本書では、芸術においてパフォーマンスと成功がいかに無関係か、様々な例が挙げられています。デュシャンのFountainは衝撃的な例の一つで、小便器にネームを書いただけの作品が現代アートの出発点として高く評価されています。実はレンブラントの作品ではないと判明した途端に見向きもされなくなった「黄金の兜の男」もその例の一つです。結局、それらの価値を決めているのはパフォーマンスではなく、ネットワークだったのです。

第二法則に向けて

今回焦点を当てたアスリートと芸術家の世界は、パフォーマンスとネットワークという軸の両極端でした。しかし、現実の課題はその両軸の間にあるものです。そういった中間領域では何が成功の決め手になるのか?第二法則で紐解いていきましょう。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする