【解3】ベンジル位の”酸化”

ドルテグラビルの中間体合成の解答です。

解答

文献で紹介されている最終ルートを紹介します。4-ピロンの2位メチル基をLHMDSで脱プロトン化し、ベンズアルデヒドに付加させて24とします。これをメシル化してから脱水してスチルベン25を得ます。最後にオレフィンの酸化開裂と生じたアルデヒドのTEMPO酸化を行いカルボン酸21の合成完了です。

最後のアルデヒドの酸化は、もともとは定法のPinnick酸化(Kraus酸化)を使っていました。ただ、副生するHClOが試薬のNaClO2と反応して、爆発性のClO2が生じうることが問題になったため、最終的にこの形に落ち着いたようです。

直接酸化は厳しかった

メチル基の酸化は通常困難ですが、一応ベンジル位なのでダイレクトに酸化はできそうに見えます。これは実際に文献でも検討されていて、メチル基が電子不足なためか相当抵抗しています。二酸化セレンを用いた酸化が唯一それなりの収率で進行したものの、毒性の高い二酸化セレンを量論量要するため断念しています。

上記の迂回合成法もかなりの検討の末に編み出されています。反応条件も検討がされており、低温でLHMDSを作用させることがエノラートの生成に重要だったようです。強塩基は必要として、カウンターカチオンとしてリチウムが望ましいのはキレート効果でしょうか。4-ピロンの安定性やベンジルエーテルの比較的pKaの低いプロトンも気になりますし、理由は明記されていませんが低温条件の必要性は仕方ないように思います。

他の方法は?

これ以上の合成経路も思いつきませんが、そんなに難しいのだったら原料から変更したらいいのでは?と思うかもしれません。実は、原料の3マルトールという激安天然物のベンジルエーテル体です。なんとしてでも3から出発してメチル基を変換しなければならない状況だったわけですね。このへんの縛りプレイは天然物合成にも似た執念を感じます。

「3-ヒドロキシ-2-メチル-4-ピロン」。富士フイルム和光純薬株式会社は、試験研究用試薬・抗体の製造販売および各種受託サービスを行っています。先端技術の研究から、ライフサイエンス関連、有機合成用や環境測定用試薬まで、幅広い分野で多種多様なニーズに応えています。

ドルテグラビルの中間体合成はこれで終わりではありません。21を鍵反応の基質31に導くには、ピロンをピリドンに変換して、もう一つの難関であるアルデヒド等価体を導入しなければいけません。

続きます。

出典

Practical and Scalable Synthetic Method for Preparation of Dolutegravir Sodium: Improvement of a Synthetic Route for Large-Scale Synthesis

Y. Aoyama and T. Yasutaka et al., Org. Proc. Res. Dev., ASAP (2019)

doi: 10.1021/acs.oprd.8b00409

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